背中と胸部の痛み

背中と胸部の痛み

肋間神経痛

背中から胸部、腹部にわたって左右に走っている12対の末梢神経が肋間神経(ろっかんしんけい)で、この神経の領域(胸や背中、上腹部など)が痛みます。変形性脊椎症などの脊椎の病気や帯状疱疹で起こるほか、肺炎や胸膜炎など胸部疾患が原因になることもあります。
症状として突然、胸や背中に、激しい痛みが起こります。からだを曲げたりした際に、刺すような痛みを感じることもあります。
多くの場合、痛みは、からだの左右片側だけに起こります。また、瞬間的な痛みが繰り返し起こる場合と、鈍い痛みが持続する場合とがあります。

脊柱側弯症

脊椎(せきつい:せぼね)が柱状につながった状態を脊柱(せきちゅう)と呼んでいます。ヒトの脊柱は7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。
正常な脊柱を横から見ますと、頚椎は前に、胸椎は後に、また、腰椎は前に向かってゆるやかに弯曲(わんきょく)しており、「生理的弯曲」と呼ばれています。正常の脊柱は前あるいは後ろから見れば、ほぼまっすぐです。
これに対して側弯症では、脊柱が横に曲がり、多くの場合は脊柱自体のねじれを伴います。側弯が進行すると重大な障害がいろいろ生じます。
側弯症のうち、大部分は学童期の後半から思春期に発生します。その多くは、早い時期に発見して治療を受ければ、進行してひどくなるのを止められます。
しかし、この年齢の子供たち、特に女子は、背中を裸で見せることを母親にでもいやがりますし、この時期には痛みなどの自覚症状がほとんどありませんので、側弯症が発見されることはしばしば遅くなりがちです。

側弯症は、ひとたび脊柱がひどく曲がってしまうと、元には戻りません。したがって、側弯症は、弯曲が進行する前に診断して、早いうちに治療を開始することが何にも増して大切です。このことから、学校で行なわれる健康診断や体重測定などの折りに背中の検診を行ない、脊柱側弯症を初期のうちに発見することがきわめて大切です。
後ろ、あるいは前への弯曲が生理的な範囲を越えて、異常に大きく(強く)なった場合に、後弯症(後ろへの弯曲が異常に大きい状態)や、前弯症(前への弯曲が異常に大きい状態)と呼ばれます。
後弯症や前弯症は側弯症と合併して三次元的な弯曲異常になることがしばしばあり、側弯症と同様に早期発見と早期治療が重要です。

胸郭出口症候群

つり革につかまる時や、物干しの時のように腕を挙げる動作で上肢のしびれや肩や腕、肩甲骨周囲の痛みが生じます。また、前腕尺側と手の小指側に沿ってうずくような、ときには刺すような痛みと、しびれ感、ビリビリ感などの感覚障害に加え、手の握力低下と細かい動作がしにくいなどの運動麻痺の症状があります。
手指の運動障害や握力低下のある例では、手内筋の萎縮(いしゅく)により手の甲の骨の間がへこみ、手のひらの小指側のもりあがり(小指球筋)がやせてきます。
鎖骨下動脈が圧迫されると、上肢の血行が悪くなって腕は白っぽくなり、痛みが生じます。鎖骨下静脈が圧迫されると、手・腕は静脈血のもどりが悪くなり青紫色になります。

上肢やその付け根の肩甲帯の運動や感覚を支配する腕神経叢(わんしんけいそう:通常脊髄から出て来る第5頚神経から第8頚神経と第1胸神経から形成される)と鎖骨下動脈は、
@ 前斜角筋と中斜角筋の間
A 鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙
B 小胸筋の肩甲骨烏口突起停止部の後方
を走行しますが、それぞれの部位で絞めつけられたり、圧迫されたりする可能性があります。
その絞扼(こうやく)部位によって、斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群(過外転症候群)と呼ばれますが、総称して胸郭出口症候群と言います。胸郭出口症候群は神経障害と血流障害に基づく上肢痛、上肢のしびれ、頚肩腕痛(けいけんわんつう)を生じる疾患の一つです。